タトゥーの前に肌に塗る麻酔クリーム。しくみや限界は、あまり知られていません。何に気をつけるべきか、やさしく整理します。

塗るタイプの麻酔と、inklyでの使い方
麻酔クリームは、注射ではなく肌に塗るタイプの麻酔です。全身麻酔のように意識を落とすものではありません[3]。
inklyでは、麻酔クリームを使うかどうかを選べます(希望制)。塗るのは提携医療機関inklinicの医師または看護師で、初回は医師の診察があり、使えるかどうかはそこで決まります。体質や持病によっては、使えない方もいます。麻酔を使う日は、クリームが肌になじむまでの時間として、全体で1時間ほど長くかかります。麻酔はタトゥーの料金に含まれ、追加料金はかかりません。麻酔を使っても痛みが残ることがあり、感じ方には個人差があります。
麻酔を使っても痛みが残ることがあります
麻酔クリームに大きな期待を寄せる方は多いですが、「痛みをなくす」道具ではありません[6]。麻酔を使っても痛みが残ることがあり、感じ方には個人差があります。
塗りすぎが招く全身への影響
麻酔クリームは皮膚に塗るだけなので、安全なイメージを持たれがちです。しかし塗りすぎなどで血中の濃度が上がりすぎると、こんな症状が出ることがあります。
- めまいや耳鳴り
- けいれん
- 不整脈や動悸
濃度・面積・時間・密封の四つがそろうほど、危険は急に大きくなります。異常を感じたら、すぐにクリームを拭き取り、救急や医療機関に相談してください。
FDAの警告
アメリカの食品医薬品局(FDA)は2025年4月、大手通販のAmazon.com宛に、タトゥーや美容処置の前に使う市販の外用鎮痛製品について警告書を出しました[12]。指摘の中心は、次のような点です。
- 市販で認められる濃度の範囲を超えていること
- 認められていない成分の組み合わせを含むこと
- タトゥーなどをうたう表示が、市販の基準に合わないこと
こうした製品は、未承認の薬や不当な表示として問題視されました。日本にいる読者にとっても他人事ではありません。個人輸入や海外通販で手軽に買える製品ほど、品質や安全性の確認が難しいものが混ざります。安いから、よく効くからという理由だけで選ぶのは避けたいところです。
アレルギーのリスク
塗った場所が赤くなる、強くかゆむ、ぶつぶつが出る。こうした反応が出たら、すぐに使用をやめてください。少量を試して刺激感を確かめられる場合はありますが、それでアレルギーを確実に除けるわけではありません。
アレルギーは時間をおいて出ることがあり、自己流の試しでは見逃すおそれがあるためです。過去に局所麻酔薬や外用薬でかぶれた方は医師や薬剤師に相談し、必要なら医療機関でパッチテストを受けてください。
inklyでは、アレルギーのある方は初回の医師の診察で、麻酔クリームを使えるかどうかを判断します。
使う前に確認したいこと
麻酔クリームを使うかは、まず関係者に相談して決めてください。役割を分けると整理しやすいです。
- 施術上の可否やタイミング → スタジオに確認する
- 製品の選び方、禁忌、副作用のリスク → 医師や薬剤師に確認する
麻酔クリームは医薬品であり、高濃度品や広範囲、密封、持病が関わる判断は彫り師だけでは担えません。
inklyでは、アレルギーのある方、妊娠中の方、皮膚に傷や病気がある方、薬を飲んでいる方などは、初回の医師の診察で麻酔クリームを使えるかどうかを判断します。
まとめ
麻酔クリームは、肌に塗るタイプの麻酔です。濃い薬を広く長く使うほど全身への影響というリスクが高まり、FDAも市販の高濃度品について警告しています。便利な道具ですが、薬であることに変わりはありません。注意点を知り、医師の管理のもとで使うことが大切です。
inklyでは、麻酔クリームは希望制で、提携医療機関inklinicの医師または看護師が塗ります(初回は医師の診察があります)。麻酔はタトゥーの料金に含まれ、追加料金はかかりません。麻酔を使っても痛みが残ることがあり、感じ方には個人差があります。
参考文献
[3] Mechanisms of (local) anaesthetics on voltage-gated sodium and other ion channels. British Journal of Anaesthesia. https://www.bjanaesthesia.org.uk/article/S0007-0912(17)37590-6/fulltext
[6] Local Anesthetics in Cosmetic Dermatology (2017). Cutis / MDedge. https://www.mdedge.com/dermatology/article/139776/aesthetic-dermatology/local-anesthetics-cosmetic-dermatology
[12] FDA (2025). Warning Letter to Amazon.com, Inc. U.S. Food and Drug Administration. https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/amazoncom-inc-689355-04172025
Medical Supervisor

須賀 公佑すが・こうすけ
医師・認定産業医
inklinic 代表 / 株式会社デルマト 代表取締役
慶應義塾大学医学部卒業後、A.T.カーニーにて戦略コンサルタントとして国内外の医療・エンタメ・エネルギーなど多業界にわたるプロジェクトに従事。2024年、日本初の医療連携タトゥースタジオ「inkly tattoo」を設立。
タトゥーが「自己表現の手段」として自由に選ばれる社会を目指し、麻酔クリームの扱いや衛生管理など、医学的知見に基づいた安心・安全な施術環境を提供している。日本におけるタトゥーの医学的・科学的アプローチの第一人者。
