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    タトゥー知識更新 読了 約11分

    REACH準拠インクを使うタトゥースタジオの探し方と予約前の確認手順

    タトゥーの情報を集めていると、「REACH準拠インク使用」という表示を見かけることがあります。ただ、その言葉をどう受け止め、予約前に何を確かめればよいのかは意外と知られていません。使用ブランドの探し方からSDSの見つけ方、問い合わせの例文まで、順番に案内します。

    須賀 公佑 医師Medically Supervised監修:須賀 公佑 医師株式会社デルマト 代表取締役
    目次

    「REACH準拠インク」という言葉が指すもの

    EUは2020年12月、化学物質の規則であるREACHの附属書XVIIに、タトゥーとアートメイク用インクの項目を追加しました[1]。対象は、発がん性や皮膚感作性(皮膚にアレルギーを起こさせる性質)などに分類される物質です。2022年1月4日以後、こうした物質を定められた濃度以上で含むインクは、EU域内でタトゥー用途として販売・使用できません[1]。基準はかなり細かく、水銀やヒ素、カドミウムなどの重金属には、物質ごとに個別の濃度上限が定められています[1]。

    これはEU域内で販売・使用される製品を対象にしたルールで、日本国内での適用や適合を直接定めるものではない点が大事です[1]。スタジオが「REACH準拠インク使用」と掲げていても、それだけでは対象の製品系列やEU向け処方であること、日本で実際に使うボトルがその基準を満たすことまでは分かりません。多くの場合、それは「EU向け基準への適合をメーカーが表明している製品を選んでいる」という意味にとどまります。以下では、予約前に製品名やメーカーの資料を確認する手順を紹介します。

    まず見るのはスタジオ公式サイトの衛生管理ページ

    使用インクのブランド名を知る一番の近道は、スタジオ公式サイトの「衛生管理」や「安全対策」といったページです。たとえば、あるスタジオは衛生管理ページの「使用インクについて」という見出しで、Dynamic ColorとWorld Famous Tattoo Inkの2ブランドを明記しています[5]。同じページには、カートリッジニードルやインクキャップ、手袋を使い捨てにしていることも書かれています[5]。使用インクと衛生対策は、同じページでまとめて確認できることが多いのです。

    一方で、使用インクをサイトに書いていない店も珍しくありません。書いていないから管理していない、とは限りません。サイトに見当たらなければSNSのプロフィールや投稿を見て、それでも分からなければ問い合わせる、という順番で進めれば十分です。問い合わせの聞き方は、この記事の後半で例文を紹介します。

    ブランド名が分かったらメーカー公式サイトへ

    ブランド名が分かったら、次はメーカー公式サイトです。例えばIntenzeのGEN-Z Platinumの製品ページには、SDSのダウンロードリンクとともに、「The NEW REACH Compliant version of the popular Intenze Platinum」という表記があります[6]。ここから、REACH適合の表明もSDSも、ブランド単位ではなく製品単位で確認できることが分かります[6]。

    World Famous Tattoo Inkの場合は、2025年5月19日更新の法令・適合情報ページに、SDSポータル、成分リスト、適合証明書へのリンクがまとまっています[7]。メーカーによってSDSの置き場所は違いますが、「Compliance」「SDS」「Safety Data Sheet」といったページ名を手がかりに探すと見つけやすくなります。

    日本タトゥーイスト協会は、2021年にSDSの掲載を案内しています[4]。ただし、現在のリンク集の掲載内容は確認できません。使用予定の製品が分かったら、メーカー公式サイトで最新のSDSを探してください。

    使用インクの確認手順を4段階で示した横方向のフロー図。

    SDSで分かること、分からないこと

    SDSは安全データシートの略で、化学物質やそれを含む混合物の情報を、受け取る側へ伝えるための文書です[3]。記載されるのは、製品中の化学物質名、物理的・化学的な性質、危険性・有害性、ばく露した(体がその物質にさらされた)ときの応急措置、取扱方法、保管方法、廃棄方法などです[3]。食品でいえば、原材料表示と取扱説明書を1枚にまとめた書類をイメージすると近いでしょう。

    SDSは製品の性質と取扱いを伝える文書であって、施術後にあなたの皮膚で反応が起きないことを保証する証明書ではありません[3]。色素へのアレルギーのような個人差は、SDSを読んでも予測できません[9]。SDSの公開状況は、メーカーが成分や危険性の情報を開示しているかを判断する材料になります。

    「REACH準拠」の表示があったら次に確かめたいこと

    EUの法令は、タトゥー用インクのラベルに、次の表示を義務づけています[1]。固有のバッチ番号、「Mixture for use in tattoos or permanent make-up」という用途文言、成分、必要な安全上の注意です[1]。ラベルのバッチ番号は、主に製品をあとからたどるための表示です。それだけで、ボトルごとに基準への適合が保証されると断定することはできません。スタジオの「REACH準拠」という表示だけでは、あなたの施術に使う色や製品まで確かめたことにはなりません。

    そこで予約前に確かめたいのは2点です。1点めは、施術で使う予定のブランド名と製品シリーズの名前です。2点めは、その製品のSDSとREACH適合の表記がメーカー公式サイトにあるかどうかです。なお、青系のPigment Blue 15:3と緑系のPigment Green 7には、一般の経過期間12か月に加えて12か月の追加経過期間が設けられた経緯があります[2]。同じブランドでも色によって事情が違う、と覚えておくと確認の精度が上がります。

    タトゥーインクのボトルを模式的に描き、EU法令がラベルに求める4項目を引き出し線で示した図。

    使用インクの記載がない店への聞き方

    サイトに記載がなくても、聞けば教えてもらえる店は少なくありません。文面はシンプルで大丈夫です。「施術で使うインクのブランド名と製品シリーズを教えていただけますか。SDSが公開されている製品でしょうか」。この2文で、使用製品とSDSの公開状況を確認できます。デザインの相談と一緒に、予約フォームやDMに一言添える形で十分です。

    回答の中身と同じくらい、答え方もよく見ておきたいところです。日本タトゥーイスト協会は、使用器具やインクの安全性を確認すること、施術前に内容やリスクを説明して同意を得ることを、タトゥーイストが守るべき事項として掲げています[8]。ブランド名と製品名を具体的に答えられるかどうかは、こうした事項に沿って情報を把握しているかを判断する、一つの手がかりになります。

    予約前チェックリストと当日に残す質問

    最後に、ここまでの確認ポイントをまとめます。第一に、公式サイトやSNSで使用ブランドが明記されているかを見ます。第二に、その製品のSDSとREACH適合の表記が、メーカー公式サイトで見つかるかを確かめます。第三に、問い合わせに具体的な製品名で答えてくれるかを見ます。この3点がそろえば、メーカーがEU向け基準への適合を表明し、SDSを公開している製品を扱う店だと確認したことになります。ただし、これだけで当日使うボトルの色や処方が同じ基準を満たすとまでは分かりません。SDSはREACH適合を証明する書類ではないためです。

    それでも残る疑問、例えば当日使うボトルそのものについては、カウンセリングの場で聞くのが一番です。EU向けの製品であれば、ラベルにバッチ番号や用途文言が表示されています[1]。「当日、使うインクのボトルを見せてもらえますか」と予約時に伝えておけば、当日の確認もスムーズに進みます。表示や文書が施術の安全そのものを約束するわけではありません。製品について具体的に説明し、確認に応じてくれるかも、店選びの判断材料にしてください。

    よくある質問

    REACH準拠インクとはどんなインクですか?

    EUがREACH規則の附属書XVIIで定めたタトゥーインクの制限(2022年1月4日以後適用)に、メーカーが適合を表明しているインクを指します。これはEU域内での販売・使用に関するルールで、表示そのものが施術の安全を保証するものではありません。

    スタジオの使用インクはどこで確認できますか?

    スタジオ公式サイトの「衛生管理」ページなどに、使用ブランドが明記されている例があります。記載が見当たらない場合は、予約フォームやDMで直接問い合わせるのが確実です。

    インクのSDSはどこで見られますか?

    メーカー公式サイトの製品ページや法令・適合情報ページで公開されている例があります。日本タトゥーイスト協会にもSDS掲載の過去の案内がありますが、現在の一覧は確認できないため、使用製品のメーカー公式サイトを確認してください。

    確認しても分からないことがあったらどうすればいいですか?

    当日のカウンセリングで、使うインクのボトルを見せてもらえるか予約時に伝えておくとスムーズです。問い合わせに具体的な製品名で答えてくれるかどうかも、店選びの判断材料になります。


    参考文献

    • [1]. European Commission. Commission Regulation (EU) 2020/2081 of 14 December 2020 amending Annex XVII to Regulation (EC) No 1907/2006 as regards substances in tattoo inks or permanent make-up. (EUR-Lex, 2020). リンク

    • [2]. European Commission. REACH restrictions. (European Commission, Directorate-General for Internal Market, Industry, Entrepreneurship and SMEs, 2022). リンク

    • [3]. 厚生労働省. 職場のあんぜんサイト:SDS[安全衛生キーワード]. (厚生労働省). リンク

    • [4]. 一般社団法人 日本タトゥーイスト協会. 安全データシートについて. (一般社団法人 日本タトゥーイスト協会, 2021). リンク

    • [5]. Fumi Tattoo Design. ご安心いただくための衛生管理. (Fumi Tattoo Design). リンク

    • [6]. Intenze Tattoo Ink. GEN-Z Platinum. (Intenze Tattoo Ink). リンク

    • [7]. World Famous Tattoo Ink. Legal & Compliance. (World Famous Tattoo Ink, 2025). リンク

    • [8]. 一般社団法人 日本タトゥーイスト協会. 入会案内. (一般社団法人 日本タトゥーイスト協会). リンク

    • [9]. Steffen Schubert, Nicolas Kluger, Ines Schreiver. Hypersensitivity to permanent tattoos: Literature summary and comprehensive review of patch tested tattoo patients 1997–2022. (Contact Dermatitis, 2023). doi:10.1111/cod.14291. リンク

    Medical Supervisor

    須賀 公佑 医師

    須賀 公佑すが・こうすけ

    医師・認定産業医

    株式会社デルマト 代表取締役

    慶應義塾大学医学部卒業後、A.T.カーニーにて戦略コンサルタントとして国内外の医療・エンタメ・エネルギーなど多業界にわたるプロジェクトに従事。2024年、日本初の医療連携タトゥースタジオ「inkly tattoo」を設立。

    タトゥーが「自己表現の手段」として自由に選ばれる社会を目指し、麻酔クリームの扱いや衛生管理など、医学的知見に基づいた安心・安全な施術環境を提供している。日本におけるタトゥーの医学的・科学的アプローチの第一人者。

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