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    ガイド読了 約12分

    東京でタトゥースタジオを選ぶときに見ておきたいこと

    東京でタトゥースタジオを選ぶときの衛生チェック、インクの確認、カウンセリングで伝えること、アフターケアの聞き方を、国内外の公的資料をもとに整理します。

    須賀 公佑 医師Medically Supervised監修:須賀 公佑 医師inklinic代表
    目次

    東京には大小さまざまなタトゥースタジオがあります。初めての方には、どこを基準に選べばよいか分かりにくいものです。この記事では、衛生面の確認やカウンセリングで伝えたいことを整理します。


    いま日本のスタジオが置かれている状況

    日本には長く、タトゥーの衛生について明確な国の基準がありませんでした。まず知っておきたいのは、2022年の厚生労働省の通知です。この通知は「タトゥー施術だけを目的とする針やマシンは、医薬品医療機器等法上の医療機器にはあたらない」と、法律上の位置づけを整理したものです[1]。専門家の解説でも、この通知で針やマシンの法的な扱いがはっきりしたと説明されています[4]。

    つまり、衛生手順そのものを定めた通知ではない点に注意してください。衛生の具体的な内容は、別の資料で議論されています。2023年には、厚生労働科学研究の成果として「タトゥー行為に係る安全管理ガイドライン案」が公表されました[2]。まだ案の段階で、いまの日本はルールを整えている途中です。対応の差が出やすい時期なので、お店選びの目利きが大切になります。業界側の動きもあります。

    一般社団法人 日本タトゥーイスト協会は「タトゥースタジオにおける衛生管理に関するガイドライン」を公開しています(PDF本文は2019年の表記です)[3]。針やチューブの扱い、手指の消毒、廃棄物の処理など、守る項目が具体的に書かれています。


    スタジオで確認したい衛生チェック

    スタジオへ行ったら、まず針が使い捨てかを確かめてください。協会のガイドラインでも、針の再利用は禁止とされ、使い終わった針は専用の固い容器に分けて捨てるのが原則です[3]。針入れの容器が見当たらない、ゴミがむき出しの状態は避けたいサインです。手袋を施術中に交換しているか、彫り師が手指の消毒をしてから準備に入っているかも見ておきましょう。再び使う器材についても、安全管理ガイドライン案では、材質に応じて洗浄や消毒を行い、可能なものはオートクレーブで滅菌するとされています[2]。

    オートクレーブは、高圧の蒸気で器具を滅菌する機械です。米メイヨー・クリニックも、新品の針、使い捨ての手袋、滅菌された器具を使うこと、適切な免許や登録があるかを確認するよう案内しています[7]。国は違っても、押さえる要点は共通です。質問して嫌な顔をされるお店は、候補から外して構いません。


    インクと「どこ製か」を聞く意味

    皮膚に長く残るインクの中身も、確かめたいところです。米FDAは消費者向けの案内で、インクによる感染やアレルギー反応の可能性を示しています[5]。2025年には、FDAが特定の「Sacred Tattoo Ink」製品について、病原性のある微生物の汚染が確認されたとして安全性の注意喚起を出しました[6]。FDAは、汚染が確認された特定製品について、こうした注意喚起を出すことがあります。

    「どこ製のインクですか」と尋ねるのは、神経質すぎる質問ではありません。良いスタジオは、使っているインクのメーカー名や、必要であればロット番号まで把握しています。FDAはこの件で、消費者にはスタジオで使うインクを尋ねるよう促し、彫り師や販売者には当該製品を使わない・売らないよう勧めています[6]。質問に丁寧に答えてくれるかは、衛生意識を測る目安になります。


    ポートフォリオと相性の見方

    彫り師を選ぶときは、SNSや公式サイトの作品集をじっくり見てください。このとき、完成直後の写真だけでなく、治った後の写真があるかにも注目しましょう。タトゥーは皮膚の中で色が落ち着くまでに時間がかかります。治った状態の作品が載っているほど、長期的な仕上がりを確認しやすくなります。もう一つ大事なのが、入れたいスタイルとの相性です。細いラインが得意な人、ブラック&グレー(黒と灰色の濃淡だけで描く技法)が専門の人、色鮮やかなカラーを多く手がける人と、強みは違います。

    気になる作品が、自分の希望に近い系統かを見比べてみてください。部位選びもスタジオに相談したいテーマです。メイヨー・クリニックは、入れる部位を慎重に選ぶよう案内し、体重の増加や妊娠で見え方が変わる場合があると説明しています[7]。「この部位だと数年後はどう見えますか」と聞くと、経験に基づく話が返ってくるはずです。


    カウンセリングで自分から伝えること

    カウンセリングは、デザインの相談だけの場ではありません。たとえばVagaroが公開する成人向けの同意書例では、妊娠や授乳、感染症、皮膚の状態、糖尿病や血液に関わる病気などの既往を確認する項目があります[13]。日本のスタジオでも、同じような内容を尋ねるお店が増えています。聞かれて答えるだけでなく、自分から先に伝えるくらいの気持ちでいると安心です。当日のコンディションも申告したい情報です。

    前日の飲酒や睡眠不足、空腹は、施術中の体調不良につながりやすい要因です。一言伝えるだけで、彫り師は休憩のタイミングを調整してくれます。デザインの希望は、できるだけ具体的に共有してください。サイズ、入れたい位置、いつまでに完成させたいかを最初に伝えましょう。結婚式や旅行などの予定があると、彫り師は無理のないスケジュールを判断しやすくなります。希望が固まっていなくても、迷っている点を率直に話せば一緒に整えてくれます。


    衛生がなぜ大事か

    器具の管理が不十分な環境では、血液を介する感染症の危険が高まるとされてきました。フランスの大規模調査をもとにした研究では、一般のタトゥー経験とB型・C型肝炎との関連が検討されています[9]。こうしたリスクは、衛生規制の整っていない環境やスタジオ外での施術でとくに問題になります。だからこそ、針が一人ごとに新品か、器具が滅菌されているか、手袋が交換されているか、という基本動作の確認に意味があります。


    アフターケアと施術後の注意

    施術後のケア方針は、お店によってかなり違います。米国の700件のアフターケア指示書を分析した2023年の研究では、内容に大きなばらつきがあり、標準化されていないことが示されました[10]。JAMA Dermatologyに載った論説も、統一基準がないこと自体を課題として指摘しています[12]。どのスタジオでも同じ説明が受けられるとは限りません。施術を受ける前に「ここではどんなケアを推奨していますか」と尋ね、できれば文書でもらってください。

    基本はスタジオの文書指示に沿って進めます。ただし、赤みが施術範囲を超えて広がる、膿が出る、強い痛みが続く、発熱するといった症状が出たら、感染を疑い、その方針を続けず医療機関を受診してください[8]。多少の赤みやかゆみは治る過程でよく見られますが、悪化する方向に進むときは自己判断を避けてください。日焼け対策もアフターケアの大事な柱です。紫外線はインクの退色を早めるだけでなく、皮膚への長期的な影響もあります。

    米国の研究では、アフターケアの場面を、日焼け対策や皮膚がんへの意識づけに活用できる機会として位置づける提案がされています[11]。タトゥーが治った後も、強い日差しの下では日焼け止めや衣類で守ると安心です。スタジオを選ぶ時点で、施術後に相談できる窓口があるかも確認しましょう。


    まとめ

    スタジオ選びでまず見たいのは、針の使い捨てと器具の滅菌、手袋の交換といった衛生の基本です。インクのメーカー名やケア方針は、遠慮せず質問して構いません。カウンセリングでは、健康情報と当日の体調、デザインの希望を自分から伝えましょう。施術後に悪化する症状が出たら、自己判断せず医療機関に相談してください。日本はルールを整えている途中です。だからこそ、自分の目で確かめる姿勢が、安心できる一枚につながります。

    参考文献

    [1] 厚生労働省. タトゥー施術行為に使用されることが目的とされている機械器具について(薬生監麻発0428第1号). 2022. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc6733&dataType=1&pageNo=1

    [2] 一般社団法人 日本タトゥーイスト協会. 厚労省(厚生労働科学研究)による「タトゥー行為に係る安全管理ガイドライン案」公表に関する案内. 2023. https://www.tattooist.or.jp/%E5%8E%9A%E5%8A%B4%E7%9C%81%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%80%8C%E3%82%BF%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%BC%E8%A1%8C%E7%82%BA%E3%81%AB%E4%BF%82%E3%82%8B%E5%AE%89%E5%85%A8%E7%AE%A1%E7%90%86%E3%82%AC%E3%82%A4/

    [3] 一般社団法人 日本タトゥーイスト協会. タトゥースタジオにおける衛生管理に関するガイドライン(PDF本文は2019年表記). https://www.tattooist.or.jp/wp-content/uploads/2024/12/eisei_JTA.pdf

    [4] 日本薬事法務学会. 厚労省通知(薬生監麻発0428第1号)に関する解説. 2022. https://www.japal.org/dom/notice/2022051605.html

    [5] U.S. Food and Drug Administration (FDA). Think Before You Ink: Are Tattoos Safe?. https://cacmap.fda.gov/consumers/consumer-updates/think-you-ink-are-tattoos-safe

    [6] U.S. Food and Drug Administration (FDA). FDA Advises Consumers, Tattoo Artists, and Retailers to Avoid Using or Selling Certain Sacred Tattoo Ink Products Contaminated with Microorganisms. 2025. https://www.fda.gov/safety/medical-product-safety-information/fda-advises-consumers-tattoo-artists-and-retailers-avoid-using-or-selling-certain-sacred-tattoo-ink

    [7] Mayo Clinic. Tattoos: Understand risks and precautions. 2024. https://www.mayoclinic.org/healthy-lifestyle/adult-health/in-depth/tattoos-and-piercings/art-20045067

    [8] Cleveland Clinic. Tattoo Infection: Signs, Causes, Treatment & Prevention. https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/23295-tattoo-infection

    [9] medRxiv(査読前プレプリント/その後 French Constances study としてPMC掲載). Tattoo practices and risk of hepatitis B and hepatitis C infection in the general population. 2024. https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2024.10.25.24316096.full.pdf

    [10] PubMed掲載査読論文. An Analysis of the Content and Recommendations of 700 American Tattoo Aftercare Instructions. 2023. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37604151/

    [11] PMC(NCBI). Aftercare Instructions in the Tattoo Community: An Opportunity to Educate on Sun Protection and Increase Skin Cancer Awareness. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7442309/

    [12] JAMA Dermatology. The Need for Greater Regulation, Guidelines, and a Consensus Statement for Tattoo Aftercare. 2015. https://www.ovid.com/journals/jaderm/pdf/10.1001/jamadermatol.2015.4000~the-need-for-greater-regulation-guidelines-and-a-consensus

    [13] Vagaro. Tattoo Consent Forms: The Essential Guide for Artists. 2025. https://www.vagaro.com/learn/tattoo-consent-form

    Medical Supervisor

    須賀 公佑 医師

    須賀 公佑すが・こうすけ

    医師・認定産業医

    inklinic 代表 / 株式会社デルマト 代表取締役

    慶應義塾大学医学部卒業後、A.T.カーニーにて戦略コンサルタントとして国内外の医療・エンタメ・エネルギーなど多業界にわたるプロジェクトに従事。2024年、日本初の医療連携タトゥースタジオ「inkly tattoo」を設立。

    タトゥーが「自己表現の手段」として自由に選ばれる社会を目指し、麻酔による痛みの軽減や衛生管理など、医学的知見に基づいた安心・安全な施術環境を提供している。日本におけるタトゥーの医学的・科学的アプローチの第一人者。

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